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Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
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Ex Epi. 「きっと”愛”を知る日が来るのだろう」
 ヴァいオおおおおおああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!(オペラのアリアのクライマックスのような張りのある声で脳内再生してください)

 号泣ですよ!!いや、大号泣ですよ!!滝漏れですよ!!いやいや、ナイアガラ泣きですよ!!「いやぁ、今さら前半辺りの中間的なエピソードを見せられても、感情移入とか難しくない?」とか思いくさってた、見る前の自分をはっ倒したい!!

 バカかオレは!!

 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の尋常じゃない「規格外」な出来栄えのことを、うっかりなめていたと言われても反論できんだろう!!

 それにしてもなんつー、なんつー濃密濃厚な一本を…つーかですね、こんなに良いものが「メディアを手にしてない人の目には止まってない」とか、心底勿体なさすぎる!!レンタルでもいいから見るんだ!!見てー!!お願いだからー!!!
 
 と、言うようなわけで。

 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのExtra Episode~未放映話について、遅ればせながらレビューをお届けいたします。

 時系列的には、第4話「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」 と、第5話「人を結ぶ手紙を書くのか?」の間に位置づけられるお話だそうです。このアニメシリーズの前半は特に、成長の日々がかなり省略されているように見えるくらい、一足飛びにヴァイオレットが成長していくような展開になっていましたが、その中でもとりわけ「ジャンプ」が激しかったように思えたのが、この第4話と第5話の間です。第4話でヴァイオレットが書けたのは、依頼者(アイリス)の身内へ宛てた、心のこもった手紙。それが、第5話の冒頭では、初っ端から「恋文上手いじゃない、お前!!」と姫に驚かれるくらいに、愛を手紙に書きつけているんですよね。愛を知らないはずのヴァイオレットが、人から手放しで褒められるくらいに上手に、愛を言葉に置き換えている。普通なら無理だよなぁ、きっとこの間に色々あったんだろうなぁ。というのが、リアルタイム放映時の私の感想でした。

 その「色々」の中でもかなり大きいパーツになると思われるのが、このExtra Episodeです。極論すれば、全てのエピソードはヴァイオレットが知りたかった「愛」の片鱗に触れるエピソードなのですが、今回は「愛という思いを言葉という形に翻案できるようになる」点において、第5話以降のヴァイオレットに繋がる重要ピースなわけです。

 もう一点。

 第3話で自動手記人形としての営みに入ってから、第8話~第9話の「過去編含み」の展開に入るまでのエピソードには、一定のお約束がありました。それは、各エピソードにおいて「問題を抱えていたゲストが如何に救われるか」と「ヴァイオレットがどのように成長するか」の二点が必ず描かれることです。

 この、「ゲストが如何に救われるか」もまた、本作において何度も我々を泣かせてきた要素なのですが、今回の「ゲストの救われ方」は、これまでに無かったパターンを孕みます。更にそれが、こうしてシリーズ放映後の追加エピソードで明らかになることで、プラスの効果が生まれました。一言で言えばそれは、「シリーズ構成上の逆算」。私自身が記事に起こしていませんが、昨年立て続けに公開されたFree!の劇場版において、総集編のはずの「絆」「約束」の冒頭部に置かれた新作カットは、後付けのはずなのに「そういうことだったのか?!」という感動を引き起こす、極上の作りになっていました。あれが、「シリーズ構成上の逆算」の一種です。追加されたエピソードによって、本来の流れが今まで以上に美しく、大きな意味を持つものとして視聴者の心に再構築される。この、カタルシスたるや、如何ばかりかと。

 …ああ、いつまでも中身に入らないでグダグダ語っていてはいかんですね。まずは今回のゲスト、イルマとアルドの話に入っていきましょう。


【愛と哀しみに立ち止まる者】
 Aパート。オペラ公演直後の喧騒では顔合わせ程度だったヴァイオレットとイルマは、後日、イルマの家で仕事を始めます。が、その前の世間話程度のやり取りの中に、既にイルマの心情に触れていくパーツがあちこちに顔を出します。

 例えば、オペラの感想を求められた時のやり取りがそうです。

「オペラを見るのは初めてでしたが、
 体の奥から震わされるような歌声でした。」

「そう。」(にこりと笑う)

「ですが、歌詞が古典語だったため、
 一部聞き取れませんでした。
 一体、何のことを歌っていたのでしょう。」


 ここで笑みが消えたイルマは、一度目を閉じ、ちょっと顔を伏せ、深く息を吸った後に「そう…。」とだけ言った後、もうその話題には触れず、仕事の中身に入っていくのです。

 この時点では見ている側もヴァイオレットもまだ何もわからないのですが、ここでイルマが思い感じている「何か」は、彼女がこれから為そうとしていることと、多分繋がっています。Bパートでアルドがヴァイオレットに語った、次の舞台の目指すところがそれです。イルマは次の舞台を、今を生きる人々が大いに共感して前に進めるような、現代劇にするつもりでいるわけです。ヴァイオレットの感想を聞いたイルマは、きっと「やはり古典では、今の人々に私の伝えたいことは伝わらないのだ…」という風に考えているのだと、私は感じました。言わば、「表現者としてのイルマ」が、ここでは強く響きます。

 しかし、イルマの顔は、それだけじゃないのですよね。仕事に入ってからのカットで、その辺が少し見えます。

「差出人は、イルマ・フェリーチェ様でよろしいですね?」

「私の名前じゃないわ。マリエッタにしてちょうだい。」


 この対話場面のカット、感覚にダイレクトに響くようでゾクゾクします。まず、二人が対面で座っているテーブルが、画面中央ではなく、右端に寄っていること。そして、光源になる窓が左側になるため、背負う形となるイルマが少し影になって描かれていること。対するヴァイオレットの方は、正面から光が当たる形で描かれていること、などです。ほんの数秒のカットなのに、何と情報量の多いことか…。

 読み解きやすいのは、やはり「イルマの影」と「ヴァイオレットの光」でしょうね。今回のストーリー上の「依頼内容」を軸として意識して読めば、これは「まだ自分の依頼の真意をオープンにしていないイルマ」であり、「手紙の代筆という、自分に課された任務の明快さに、何の疑いも持っていないヴァイオレット」との対比です。複雑な思いの上で行動しているイルマ、天真爛漫と言ってもいいほどにまだ単純な行動のヴァイオレット、と言い換えてもいいでしょう。

 更に、これを彼女らの内面へと掘り下げて見直すと、もう一つの見方が見えてきます。それは、「もう帰ってこない大事な人への愛と哀しみを抱えるイルマ」と、「長く会えていないものの大佐の無事を信じて疑わないヴァイオレット」の対比にもなり得るのです。

 そのような暗示が込められた二人が、このように右側へ寄せられていることで、見ている我々は何とも言えぬ不安定さを感じます。イルマ側の空間が圧倒的に広いことは、「この世界がまだ行き場を失った愛や悲しみに満ちている」と読むことが可能ですし、ヴァイオレット側が狭いことは「これからヴァイオレットが直面する問題に、ヴァイオレットが追い詰められようとしていることの提示」にも読めます。ヴァイオレットが直面する問題?イルマの依頼が高度すぎて難儀すること?それとも、ヴァイオレット自身が愛と哀しみに苛まれる時がやってくること?

 …この手の命題には、正解はありません。どのように解釈してもいいのでしょう。しかしいずれにせよ、これだけの広がりと深みを、見ている者に惹起させられるのは、やはり流石と言うほかありません。

 更にこれに続く、イルマの顔のアップとそのセリフが…

「そして相手は彼女の恋人。名前はモデスト。

 戦場に行って、

 ……………まだ、

 ……帰ってこないの。」


 いやあああああああああああ(嘆息)。

 この、何とも言えぬ間の、素晴らしさよ。

 「戦場に行って」の後の、言葉を迷う絶妙な時間の描き方、イルマの表情、瞳の動き!!もう、どれ一つ取っても一級品じゃないですか!

 後で明らかになるとおり、マリエッタのモデルはイルマです。だから、モデストの運命は、イルマの恋人・フーゴと直結するんですよ!

 それ故に、「まだ」の一言を付け加えるかどうかで、イルマはこんなにも逡巡するんですよ!彼女の中では、もう一つの選択肢であろう「もう」にすべきかどうか、この、「短くて長い時間」の間にすごく葛藤したんですよね!ここ、後で試験に出るからな!ちゃんとノートしておくように!

 見事な三点セット、という他ないでしょう。この短い一連のシークエンスの中で、イルマの抱えるものを全て描き切っているんですね。彼女の中にある愛と哀しみも、それ故に前に進もうと足掻く姿も。


~~~


 一方、やはり愛と哀しみを抱えているはずのアルドの方は、上記のイルマほどにわかりやすい描写は、少なくとも前半では顔を出しません。辛うじてそこに繋がるパーツが配置されているのは、Aパート冒頭でイルマに時間をもらえないか尋ねて断られるシーンと、Aパートラストでイルマを諭そうとするシーンの二か所くらい。

 そのAパートラストのシーンですが、これまた短い中にギュッと多くのものが詰まっています。

 例えばこのシーンに入る直前、沢山のろうそくが燃える、一瞬のカットがあるんですが…なんでしょうね、これ。ろうそくの長さはまちまちで、まだまだ長いものもあれば、もうほとんど残っていないものもあって、でもいずれも赤々と燃えています。

 「死神」という落語をご存知の方なら、このろうそくが命を表すかも、ということに思い至るのではないでしょうか。大小さまざまな長さで、しかししっかりと火を灯しているろうそくたち。だとすればこれは、「今を生きている人々」の暗示です。場面が転じて、夜の駅前の風景になると、そこには往来する人々の姿と、何故か佇み、駅を出入りする人々を見ているイルマの姿が映ります。

 イルマも、彼女が見ている人々も、今を生きる者たちであり、言わば燃えているろうそくです。じゃあ、彼女が待っているものは、一体どうなんでしょうか。

 …切ないですよ、これ。誰にもどうにもできないことだけに、すごく切なく感じます。

 そしてそこにアルドが近付いていき、こう声をかけるのです。

「もう、諦めるんだ。」

「……!」

 …わかってるわよ…。

 けど……こだわってるのは、あなたも同じでしょ。」


 イルマも、アルドも、同じ「帰ってこない大切な人」のことを諦めきれずにいる、ということなのでしょうね。この会話のシーンでは、噴水越しに二人の様子を映す演出が取られています。二人とも、体は全く濡れていないけど、何かが濡れていること…例えば、心が涙で…を暗示しているのでしょうか。或いは、流れる水で乱れる二人の姿が、彼らの心が千々に乱れる様を表しているのかも知れません。


~~~


 息子のフーゴに対するアルドの割り切れない思いが見える形で描かれるのは、Bパート前半の、イルムの回想シーンの狭間です。開いたロケットの中に今もある、息子と二人で撮った写真。そして、戦争に赴く日、背を向けたまま絞り出すように息子に告げた「絶対に帰ってこい」の言葉。

 これだけだと、自分のことをあまり語らないアルドがどこまで苦しんでいるかは、はっきりとはわからないのですが、その後のイルマの言葉がそれを補完してくれます。

「私…アルドにも酷いこと言っちゃった。
 彼だって辛いのに。
 私だって、もうフーゴが帰って来ないことくらいわかってる。

 …でも。

 そんな、簡単に…

 諦められるわけ、ないじゃない…!」


 ぐふっ……いや、ここだけでも軽く死ねるんですがっ。

 回想シーンで、イルマの恋人としてのフーゴと、アルドの息子としてのフードが交互に描かれることで、イルマとアルドの今の苦しさは、同じものとして描かれます。イルマに看破されていたように、アルド自身がフーゴのことを諦められていないのですよ。なのにアルドは、「もう、諦めるんだ」とイルマに告げています。自分でも「諦めなくちゃいけない」と思いつつ、諦めきれないでいるのに、イルマのことも気遣ってそう告げているのだと思うと…辛いっすわ、ホントに。



「ヴァイオレット。

 付き合ってくれてありがとう。
 一人じゃないのも、悪くなかったわ。」


 別れ際の、イルマのセリフです。初めて聞いた時は、繋がりがよくわからず、違和感があったのですが…何と言いますか、これまた深いセリフです。

 流れだけ追うと付きまとおうとしたのはむしろヴァイオレットの方なのですが、イルマの言葉通りなら、「イルマの何かにヴァイオレットを付き合わせた」ということになります。また、「一人じゃないのも~」のセリフからは、その付き合わせた何かの時は、いつもは一人だった、ということになります。

 この間にイルマとヴァイオレットの間で語られたことと言えば…フーゴのことを振り返って思う、くらいしかないのですよ。

 いつも、イルマは、フーゴのことを振り返って思う時は、一人だったのです。大切な人が多分もう帰っては来ない、という哀しみも含めて、イルマはそれをアルドとの間で共有していない、ということになります。そう思うと、Aパート冒頭で「またあの話?もうやめましょ。」とアルドに告げたあのシーンが、とても胸に染みるんですよ。

 しかし、イルマは「他者と一緒にフーゴのことを振り返ったこの時間」を、肯定できました。弔いの最初の一歩なんですよね、死者が死んだことを受け止めるのって。だから、イルマは何だか、少し清々しい表情になっています。

 ちゃんと歩き始めるためには、もう少ししっかりと自分の中に落とし込む必要があるのですけどね。例えば、「そのことを言葉にする」などして。



 Bパート前半の、ヴァイオレットにイルマの依頼の真意を語っているアルドの言葉の中に、重要なことが言われています。

「あの戦争は多くの人々に傷跡を遺した。
 今もその人々の心は凍りついたまま。
 次の時代の到来を感じることも、
 前に進み出すこともできていないんだ。

 この物語は、彼女に頼まれて私が書いた。
 ヒロインのモデルはイルマ自身だ。
 曲も私が全部作って、彼女と相談しながら
 進めていたんだが、私もイルマも、
 クライマックスでヒロインが恋人に書いた手紙を
 読み上げるシーンの歌詞が、歌が、
 どうしても、納得のいくものにならなかったんだ。」


 何故、アルドもイルマも、納得のいく歌詞を書けなかったのでしょうか。

 それは、アルド自身もイルマ自身も、「心は凍りついたまま」「前に進みだすこともできていない」からなのではないでしょうか。

 今を生きる人々の心を融かしてあげたいと願うアルドとイルマ自身が、前に進めないでいるという強烈なジレンマ。

 実は、誰よりも「その歌」を必要としているのは、アルドとイルマなのかもしれません。



【愛と哀しみをまだ知らぬ者】
「私は、愛を知らないのに、
 愛を言葉にできるのでしょうか。」


 Bパート中盤でヴァイオレットの口から語られたこの言葉が、今回のヴァイオレットに課された課題を端的に言い表しています。

 アバンにおいてもそのことはよく示されていて、例えばアルドのモノローグでは客席に見えたヴァイオレットの様子がこのように語られます。

初めて見た時の彼女は、まるで人形のようで、
イルマの求める手紙の代筆ができるようには、
とても、見えなかった。


 ここで言われる「人形のよう」は、見た目の綺麗さを表しているわけではなく、人間のように喜怒哀楽があるように見えないという意味合いでしょう。それを補強するように、舞台を見終えたヴァイオレットの様子は、「オペラの舞台に感動しているわけではなさそう」に描かれています。翌日のイルマとの対話で言われるように、「体の奥から震わされるような歌声」を捉えてはいるんですよ。でも、それが「ヴァイオレットの心への、内面への揺さぶり」にまでは達していません。だから彼女は、拍手喝さいの場内にとりあえず立ち、周りの様子を観察し、周りに合わせて拍手をしているだけなのです。

 未だ愛を知らず、人の感情への共感も十分ではない、ヴァイオレットという少女。

 そのヴァイオレットが、愛を言葉にできるようになるまでが、今回の彼女の課題です。


~~~


 Aパートでは、彼女はそれを「職務」としてこなそうとします。実はそのとっかかりで、単純な職務としてではなく取り組めるかもしれない端緒があったのですが…。

「あなたが噂のドールね。」

 「噂…」

 「郵便協会の先生が、是非あなたをって紹介してくれたのよ?」

 「どなたのことでしょうか。」


 この対話は、イルマのところに殺到してきた花束やら何やらで、うやむやになってしまいました。続きは、アルドが語ってくれるまでお預けとなります。


 翌日イルマの家で仕事を始め、いざ本文を、と構えるヴァイオレットを他所に、一切言葉を紡がないイルマ。訝しく尋ねるヴァイオレットに告げられるのは、全部自分で考えて書けと。それがドールの仕事だろうと。いやぁ、単純に考えても「それってどうなのさ」と思いますが、ましてやそのドールは、「愛を知らない」ヴァイオレットですよ?自分で全て考えての恋文など、書けるはずがないじゃないですか。ねぇ?

 でもまあ、我らがヴァイオレットは実直です。自分に出来るベストを尽くすべく、タイプを始めます。

「終わりました。」

「読んでみて?」

「親愛なるモデスト様
 マリエッタは現在、
 戦闘区域外にて待機中です。」

「はあ?!」


 やらかしたwwwwまあ、そうなるわなwwww

 ヴァイオレットが第4話を経ていることを考えれば、もう少しマシなのが書けるんじゃないか?とも思いますが、恐らくは「手掛かりなく完全に自分で考えて書こう」とすると、これがこの時点のヴァイオレットの限界なのでしょう。

 推薦を受けてやってきたドールがこれを書いたなんて、イルマもまあお気の毒様と言いますか…。しかしイルマも大したもので、彼女が欲しいものを明快な言葉で告げ直します。

「その言葉を耳にした、
 全ての女性が共感し、
 全ての男性の胸を打つ、
 そんな恋文が欲しいのよ?」


 うーん。

 これでハードル、さらに上がりましたね?いや、目的とするところは確かに明確になりましたが、そんなん、普通できませんやん。

 でも、ヴァイオレットは本当に、「職務」に対して実に真面目で、実直です。資料をあたって過去の文献を紐解き、自分の中に落とし込み、それを反映させて文案を紡ぎます。ダメ出しを食らえば、またその指摘を解消できるよう、別な資料を当たり…そのヴァイオレットの行動の合間に映った「機械の自動手記人形」のカットは、ヴァイオレットが自らの職務にかけている彼女なりの誇りみたいなものを表していそうですね。

 しかし、表現が古すぎる、いつの時代だとツッコまれて、彼女なりに勉強して書き直したこれは…

「あなたのことが、愛しくて、愛しくて、
 愛しくて、愛しくて、愛しk」


 今どきのJ-POPかwwwwいや、直接そういう曲があるのか知らんけどwwww

「大げさすぎよ?
こんなんじゃ今どきの人は引いちゃうわ。
時代をもっと感じながら書いて。」


 はーい、今どきのJ-POPさん、ダメ出し入りましたー!(爆)

 次第に行き詰まり、文献に伸びる手も途中で止まり、部屋の隅に行って戻ってこなくなるヴァイオレット…いや、めっちゃ大変なところ悪いんだけど、可愛いwwww可愛すぎるわコレwwww何の小動物wwww


~~~


 アルドから、「依頼内容はただの手紙ではなく、オペラの中で読み上げられる手紙としての『歌詞』だ」ということを伝えられたヴァイオレットは、一旦はここで折れているように見えます。

「それで、どうするつもりなの?」

「…一度受けたお仕事ですが、業務内容と異なります。」


 その先を彼女は口にしていませんが、それは自分の職務ではない、と結論付けているように見えますね。だから、「それでいいの?」と何度も尋ねられながらも、他の社員が書いてくれた歌詞を手に、アルドに渡すのです。尤も、アルドからは「これは君に依頼した仕事ではなかったかな?」と痛いところを突かれてしまうのですが。

 改めてアルドから、これは通り一遍のただの「職務」ではなく、その能力を見込んで名指しで頼まれた「期待」であることを告げられるヴァイオレット。

「それで、恋文なら、ドールにお願いするのは
 どうだろうという話になってね。

 知り合いの郵便協会の人にアドバイスしてもらったら、
 君の名前が出たんだ。

 確か、ローダンセ、という人だ。」


 ぶわっ。(いきなしMAX決壊)

 あうあっ…あうあう…ロ、ローダンセ教官の名前をここで聞くことになるなんてっ、初見時は欠片も思ってなかったんですよっ…第3話時点でも、あの鉄面皮の下の「しっかりと生徒たちを見据え、深い愛で彼女らの成長を見守る姿」には散々泣かされたものですが…ホントに、ホントーにっ…ローダンセさんはしっかりと見てくれていたのね…ヴァイオレットのことは特に、「この娘はきっと良いドールになるだろう」と評価してくれてたんだね…でなきゃこんな推薦、するはずがっ…。

「ローダンセ…教官…。
 教官が、私を推薦してくださったのですか?」

「ああ。イルマが作りたい歌の内容を伝えたら、
 彼女が君の名前を教えてくれたんだ。

 とても難しい依頼ですが、
 できそうなドールが一人居ますと。

 彼女なら、今を生きる人々に届く恋文を、
 書けるかも知れませんとね。

 もう少し、手伝ってくれないか?」


 このシーンにも、意味ありげに光と影が配置されています。

 アルドとヴァイオレットを背中の方から見るアングルで、正面に光源が置かれているので、画面は完全に逆光なんですよ。何の意味もなく、こんなことはしない気がします。ここで語られている内容が、今回の依頼の理由であり、舞台裏であり、表に出ていなかった真実が明らかになる場面だから、人物の影の方から撮っているのではないでしょうか。そしてまた、ここで語られた事実は、ヴァイオレットには「光明」になるはずです。彼女はローダンセ教官からの信頼を聞かされ=光に照らされて、彼女自身の矜持を取り戻すとともに、教官から教えられたとても大事なこと…「良きドールとは、人の言葉の中から、伝えたい本当の心をすくい上げるもの」を思い出すのです。


~~~


「私は、愛を知らないのに、愛を言葉にできるのでしょうか。」


 アルドから今回の依頼の真意と、自分を推してくれた恩師のことを聞き。イルマの言葉に触れて、イルマの心に近づけたような気がするヴァイオレットは、それでも悩みます。昼の駅前で、イルマがそうしていたように、行きかう人々を見ているヴァイオレット。でも、恐らくそこに、彼女の求めるものはまだ見えていないのです。

 ローランドに声をかけられ、自分の悩みを弱音として吐くヴァイオレット。この時、ヴァイオレットの向こうには、噴水の流れる水を通して、輪郭のぼやけた街並みが見えています。ヴァイオレットにとって、世界は、そこにある人々の愛は、輪郭の不確かな、はっきりと見えないものなのですね。



 ローランドに連れられて、「行き先も送り主も失った手紙たち」と出会うヴァイオレットは、そこに書かれている「愛してる」に、ハッとします

「この手紙全てに、
 書いた人の心が込められているのに、
 その想いは誰にも伝わることはない。」
 航空祭があれば、空から撒いてあげられるんだが。」

「皆さん…ご自分の愛してるを、
 手紙に込めているのですね。」

「ああ。そうだな。」


 もう、恐らくはどこにも行く先の無い想い。でも、それを言葉にすることは、決して、無駄では無いのです。かつての人々の思いは、それがあった証が、こうしてここにある。ヴァイオレットの目に止まったそれは、凍っていたものが融けたように、鮮やかに蘇るんです。

 …私事ですが、何と言いますか…私自身がこうしてレビューを書く理由も、これに近いところがあるんですよ。例え全く読まれることが無かったレビューでも、書き付けておくことには意味があるんです。それは、その時に思いのあった証であり、愛の形を記したものなのです。




 愛そのものを理解したとは言えないけれど、手紙の中にそれぞれの愛を込める人々の思いに、深く感じ入ることができたヴァイオレット。彼女は、今の彼女なりの精一杯で、手紙を書きます。きっと、彼女の中では明快な言葉にはなっていないのでしょうけれど…これは、「行き場の無い愛であろうとも、ここにその証を残そう」とする行為なんですよね。

 だから、その思いは、イルマの気持ちと重なるんです。

「改めて書き直しました。

 ですが、やはり、
 こういうのではなかったでしょうか。

 もしかして、イルマさんの心を
 すくい上げただけになってしまっているでしょうか。」


「そうかもしれない…。


 …けど…


 これは!私が欲しかったものよ!ヴァイオレット!」


 戻らない愛への悲しみに自分自身が暮れながらも、人々が前を向いて歩きだせるような道を開きたいと願った者。

 そして、愛というものを未だ知らず、しかし人の思いに触れながら、少しずつ愛へとたどたどしく進んでいく者。

 この二者が、奇跡のように架け橋で繋がるシーンなんですよ…いや、もう、何と表現していいんですかこの気持ちを!

「ヴァイオレット。
 ありがとう。」


 この感謝の言葉は、イルマが救われた証であると同時に、ヴァイオレットにも救いをもたらすんですよね。驚きとともに、失礼ながら書けるとは思っていなかった、と告げるアルドに、「私も、そう思っておりました」と呆けたような表情で言うヴァイオレット。第3話ラストでブローチをもらえた時のことを思い出しますね。



愛はいつも
陽だまりの中にある
見えなくても
触れられなくても
そばにあるように


 書かれた歌詞が、手紙っぽいかどうかは、まあ脇に置いておきましょう。個人的に胸を打つのは、上に引用した部分かな。さらっと聞き流すとどうということは無いんですが、戻らぬ大切な人への愛を思い、その愛の行き場所へ思いを巡らす時、それが「いつも陽だまりの中にある」と言われるだけで、どれほど救いになるか…。

ヴァイオレットの書いた手紙が、
凍っていた私の、イルマの時間を動かし始めた。
ここにいる私たちは、この歌とともに、
ここから新しい時を刻み始める。


 アルドに関してはホント、こういうポイントでしか彼の気持ちを推し量ることができないんですが、この言葉を聞くとイルマと同等の辛さを抱えてきたんだなって思うんですよね。彼も救われたんですよ、ヴァイオレットの書いた手紙に。まだ自身は愛を知らぬ、けれど愛を知りたいと願って前へ進む少女のおかげで、彼らは前へ進めるようになったんです。


 一方のヴァイオレットは、これから、愛を知ることになるんです。


 その愛しさも、それ故の悲しみも。


 そうして歩けなくなって、立ち止まって。


 でも、また、手紙を通じて思いが巡ることに気付き。


 再び、歩き出せるようになるまで…。


 イルマとアルドの姿は、つまり「未来のヴァイオレットの姿」なんですよ。


 アバンで見せた様子と違って、舞台に、歌声に見入り、自ずと席を立ち上って拍手するヴァイオレットは、まだ「ほんの小さな一歩」を歩んだだけです。ですが、その先にはきっと祝福があるに違いありません。天上から舞う「愛」たる手紙の一つが、彼女の元にも舞い降りているのですから。


そして。


君にもいつか。



(きっと”愛”を知る日が来るのだろう)



 うがはああああどぅわあああああああああうぇえええええうぇっうぇっどぐらばああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 油断してた!!そうだよね、ラストのサブタイトルで殺しに来るスタイルだったよね!!この、「音声が無いが故に心の奥底までじわっと沁み込む」ような味わい!!すいませんごめんなさいゆるしてください、つーかですねぇ!!

 …救われた者の感謝を込めながら、これからやってくる困難への救いを約束してくれるような、そんなものをこの短い描写でやってのけてくださるなんて、一体どんだけの……。


 ああ。


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!


 スタンディングオベーションせざるを得ん!!素晴らしい!!拍手喝さいだ!!


 …難産だ難産だと思っていたら、実に1万2千字を超えるすんごい波動砲記事になってしまいました。それだけ、このエピソードから掘り起こしたいものが多かったのだと思います。

 改めて、このシリーズの制作にかかわられた全ての方に、感謝申し上げます。今は特報で言われていた新作を制作中なのだと思いますが、どうぞ皆様、お体に障らぬようお過ごしください。新作完成の報せを、首を長くしてお待ちいたします。

 また、こんなに時期外れのレビューを読んでくださった方にも、万感の思いとともに感謝をお伝えしたく存じます。またいつか、別な素敵な作品のレビューでお会いしましょう。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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2019/08/19(月) 02:33:02 | たらさいと