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Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
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日常の第10話
 「強制的に進行するもの」。


 それこそが、「日常」という怪物の一つの側面だ、という趣旨のことを以前のレビューで書きましたが、それと関連するようなモチーフが、今話に投入されたエピソードの多くを占めていたように思います。


 「なすすべなし」。


 いやぁ、なすすべなかったっすなぁ、今回は。先週は「(時たまある)自分には合わない回だった」てな程度のことしか書けなかった私でしたが、今週はもう!頭っからお尻まで、ずっと笑いっぱなしに近かったですよ!くすっと言う程度のものから、たまらず腹ァ抱えて身をよじらせてヒィヒィ言うものまで、選り取りみどりで。ともに単行本第6巻に収録のショートネタも「前回=1-B」「今回=川釣り」と双方にあるし、ゆっこがかあちゃんにどつかれて終わるネタも「前回=蚊」「今回=日常の43」と両方存在するし。それなのに、一体どこが違うの?って聞かれちゃったら、納得いくように説明できる自信がないですよ、あたしゃ。


 この、なすすべなき日常に。乾杯。
 

~~~


 さて。

 まずはスーパーの弁当・お総菜コーナーの話から行きましょうか。

 当初は中継ぎ部分の定番ネタかと思われていた、じゃんけんぽんも大福の縄跳びも無くなってしまった今。「ヒトコトワドコトバ」とともに秘かに残っているのが、合間合間にインターミッション風に挿入される、あの定点カメラシーンです。とある場所を毎回ひとつ決め、そこをただ写しているだけのような、表題のないカット。日常に詰め込まれるネタがどんな組み合わせであっても、ただただ同じ場所を映していき、しかし時間が刻々と変わっていく様が描かれます。

 これは、「ゆっこやなのたちが如何に非常識なイベントを経ようとも、目に付かぬところで日常は進行している、ただ静かに時間を流していく」ということを表しているかのようです。実際、これらの一連のシーンには、メイン・サブを問わず日常のキャラはほとんど姿を現しませんし、稀に姿を現す時にも、その風景に対して「何かが大きく変わるような」能動的な行動は、何一つ行われません。これ自体が、「日常というものが本来より持つ強固さ」を表しているようでもあり、「より強固な日常」というものの存在を示唆している風さえあります。

 その風景に今回選ばれていたのが、スーパーらしき店内の弁当・お総菜コーナーっぽい空間でした。いやぁ、ビビりましたなぁ。だって、見たことないモノからスタートしたんですもの。あのカットの一発目、あれぁ多分早朝の、誰もいない店内の様子ですよね?商品はまだ一つも並んでおらず、整然としているようでいてその実は全く空虚なこの空間。そんなものが、いつもより描写時間、微妙に長くなってないかって思われるくらいに、こちらに迫ってきます。

 二度目に来た時は、恐らくは開店前の直前の時間帯でしょう、この空間は全て商品で埋まっていました。今度は空虚ではなく、みっちりと詰まって整然と並んだ、確かな空間です。でも、あれ、何だかやっぱり、見覚えがありません。それもそのはず、これもまた一般のお客さんは決して目にすることのないモノなんですよね。一個も商品が欠けていない棚、というものは目にする機会があるでしょうが、だけどこんなに人っ気が無くて静謐な状態、というのは、まずお目にかかれません。

 そして、三度目。何と、もう商品の残りは少なくなっており、女性店員さんがそのうちの一つに値引きシールを貼っていきます。あれ、いつの間にそんなに時間経った?つーか、ごった返してるお店の時間帯とか、すっ飛ばしなの?ひょっとして手抜kいやいやいや、そうではないでしょう。無論、そういう副次的効果もあるにはあると思いますが…本来的な意図は、「人のいない時間帯を中心に描こうとしているから」のはずです。そうでなければ前二回の、基本的にお客の目には触れないシーンを続けて出してくる理由がありませんもの。


 あのシーンにも、「日常」というものは、ある。


 いや。


 あのシーンにこそ、より強固な「日常」の本質が隠れている。


 そんなテーゼの提示があれらに含まれていたとしても、全く不思議ではありません。人がいて、何気ないことを日々やっていて、それもまた日常の側面ではありましょう。だけど、人の目に触れることさえないあれらのシーンには、「上位の日常」みたいなものを感じるんです。

 人の手で、決してどうこうできない、アンタッチャブルな時空間。それは、ある種の「日常の本質」たり得るのではないでしょうか。


~~~


 という辺りで、そろそろ個々のエピソードにも言及していきましょうか。


 「日常の41」。流しそうめんの話です。安中さんというキャラ、久しぶりの登場でした(久々すぎて名前が思い出せなかったw)が、何だかとんでもない目に遭っています。彼女はただ、「自分ではやったことない流しそうめんに参加してみよう」と思っただけ。それが、よくわかんないおばさんから一方的にいいように言われて、困惑しながら状況に流されて(そうめんはほとんど流されていないのにw)、もう後半はほとんど「えー」しか言ってません。彼女に言えるのは「えー」という、抗議とも不同意ともつかない、微妙で感情的な音声だけ。状況を能動的に変えることも、その場から目を背けることもできません。なすすべなく、眼前に流れる強固な非常識と、向き合うことしかできません。


 「なすすべなし」。そういうことです。



 ちょっと遡ってAパートしょっぱな、「日常の40」。遅刻するゆっこのエピソードです。車の殆ど通らない横断歩道で、律儀に信号を守るゆっこ。これは偉いのか微妙に融通が利かないのかわかりませんが、面白い子ですね、ゆっこは。こういう時には、ちょっとズルさせてもらって、という子の方が圧倒的に多いだろうに。しかしここで、彼女が交通法規を守る前提で動いていることで、あることが浮き彫りになっています。信号を自分の都合よく青のままにしておくことは彼女には出来ませんし、赤信号の時に車を一台でも走らせることだって無理なんですよね。ただ、目の前の状況に、従うことしか出来ません。4つも赤信号に出会おうとも、彼女に出来るのは青に変わるのを待つことだけ。

 教室に着いてからも、さんざんです。黒板消しトラップはあるわ、後部ドアに鍵はかかってるわ、下部の窓にも黒板消しが挟んであるわ、上部の窓さえいつの間にやらスティンドグラスに交換されているわと、隙がありません。結局、考えた末に彼女はいっそ食らってやれと気持ちを固めて扉を開けるのですが…その教室には誰もおらず。ピエロを演じることさえ叶わない、本当にどこまで行っても彼女の思うようには行かないんです。


 「なすすべなし」。そういうことなんです。



 基本的に、ただ流れ行く「日常」というものに対して、個々の存在はなすすべを持ち合わせていません。ただ受け入れるしか無いんです。「無敵星人」であっても、突如やってくる災厄からは身を防ぎようがない。褒められて伸びる少女も、それに気付いてくれる先生がいなければ伸びようがない。ありがちなアメリカンジョークだとわかっても、飛び立ってしまったスペースシャトルはやり直しようがない。どんぶらこどんぶらこと、せっかく流れてきた稀有な体験のネタであっても、帰ってしまったからには気付きようがない。「なすすべなし」です。どこまでも。


 もちろん、そこに反逆を試みることも、出来ます。


 麻衣は反逆キャラの代表格ですね。凡そ、普通のコトをしませんからね、彼女。今回は「シャボン」が白眉かな。あのシャボン玉は、触れてはいけないもの。消えるか飛んでいくか、それとも漂い続けるか、いずれにしても手は出せない、本来はアンタッチャブルなシロモノです。言ってみれば、なすすべなき日常の象徴とも考えられるでしょう。

 麻衣はそこに手を出します。ある意味では反逆者とも言える行動ですよね。ただし…それでどうにかなるのかと言えば、全くどうもなりません。シャボンを口に入れても、世界が変わるわけじゃない、日常も揺らがない。結局、麻衣本人には、反逆の意図はないのでしょう。彼女は、目先の物事に対して、彼女なりの奔放で接しているだけに過ぎません。ベクトルが異なるだけで、ゆっこと左程変わりないわけですね。

 だから、アバンの「だるまさんがころんだ」において、麻衣が普通の鬼が絶対しない「ずっと見つめているだけ」という反逆めいたことをしても、それは日常の強固さを崩すわけではなく、また別の「なすすべのない状況」を生むだけに終わってしまいます。可哀想に、鬼に座り込まれてしまって、鳥まで頭に止まったゆっことみおは、もう虫の息ですwww

 「日常の42」では、反逆した阪本が、なすすべのなかった状況に一太刀入れたようにも見えますが…今度ははかせが「なすすべのない状況」になっているという意味で、全体像はあまり変わっていません。マイルス・デイビスもびっくりです。

 反逆してみたところで、どうにもならない。それが、日常というものの強固さなんですよ。


わたしたちは
日常という名の水の面に生きている
浮いている。だが もぐらない
もぐれない。――日常は分厚い

(吉野弘「みずすまし」より)



~~~


 「日常の43」。


 宿題を何故やらなければならないのか。勉強を何故やらなければいけないのか。うん、誰でもそう思うよね。つい何ヶ月か前に、受験生だった息子ともそのことで言い合いしたよ、うん。

 色々考えても、結論は出ません。なりたいものややりたいことも突然湧いてきたりしない。そのうち親にも怒られる。しょうがないなぁ。とりあえず宿題するか。


 でも。


 宿題したくねええええええええええええええええええええええ!!


 …あはははは、涙出てきたよ。いったんEDに入っておいてのこの攻撃はズルいよね。でも、そうなんだ、この通りなんだ。しょうがないから「やるか」と思うんだけど、「やりたくない」という気持ちが無くなったわけじゃない。結局は膠着状態じゃんか。息子もそうなんだろうし、私自身だってそう。ちきしょおおおおお、仕事したくねえええええええええええええええええ!!とか、何千回、何万回思ったことか。


 その、僕らを苦しめる「日常の強固さ」は、同じ強固さで日々を流していきます。


 やりたくない。如何に強くそう思っていようと、如何に強くそこに縛り付けられていようと、それなりに翌朝はやってくるものです。


 誰も見ていなくても、スーパーのお惣菜コーナーには毎日新しい商品が並ぶんだし、ね。




 笑った箇所を挙げきらないで終わっちゃったけど…今週はこんなところで。うーん、笑って楽しんでいる場所とレビューに書いている場所と、必ずしも一致はしないよね。請うご容赦。次回も、楽しみにしています。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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テーマ:日常 - ジャンル:アニメ・コミック

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