…な。
なんという不快な…。
素のままぶつけられる汚れた言葉、正当性を持ったかのように高らかに宣言される復讐、利己的な目的や存在意義のために利用される少女の無垢な心、その結果として崩壊していく「大切な世界」……。
でも、これが、人が誰しも生きていく上で何度も向き合わねばならない、「憎しみ」というものなのだとしたら。そして、そこに、「今度こそ逃げ出すまい」として立ち向かう少女がいるのだとしたら。
見ている僕らが逃げ出してどうする!いかなる結末が待ち構えていようとも、最後までかぶりついていこうじゃないか!運命に翻弄される二人の「ユウコ」に、最後の望みを託して。
なんという不快な…。
素のままぶつけられる汚れた言葉、正当性を持ったかのように高らかに宣言される復讐、利己的な目的や存在意義のために利用される少女の無垢な心、その結果として崩壊していく「大切な世界」……。
でも、これが、人が誰しも生きていく上で何度も向き合わねばならない、「憎しみ」というものなのだとしたら。そして、そこに、「今度こそ逃げ出すまい」として立ち向かう少女がいるのだとしたら。
見ている僕らが逃げ出してどうする!いかなる結末が待ち構えていようとも、最後までかぶりついていこうじゃないか!運命に翻弄される二人の「ユウコ」に、最後の望みを託して。
行間を読まねばならない箇所は少なからずありましたが、「少年少女の視聴者は読まなくてもよいように」「大人の視聴者には読もうと思えばわかるように」という風に苦心された配置がなされていて、一気に見てよし、何度も繰り返して見てよしという、多面的な回となっていたように思います。
パッと見に派手で子どもでもわかる部分としては、まさかのこのタイミングまで取ってあったと思われる隠し玉、「飛行するサッチー」の絡んだバトルに拳を握りっぱなしでした。まだこんなものが取ってあったなんて!やや悲壮感に彩られる中での飛行シーンは手放しでは喜べないところはありますが…でも、夢ですよね、ああやって、自分に翼が生えたかのように飛ぶ体験って。
そうして、最早お家芸と呼んでも差し支えなさそうな、「慣れ」というものと無縁のような激しいバトル、空中戦。第一話で「子どもたちの敵」として登場したサッチーが、今回最後の最後までヤサコを守りぬき、2.0を道連れにして轟沈する様は、一言で言い表せないカタルシスを与えてくれます。宮崎駿作品に出てくるラムダとか、あの辺へのオマージュも入っている感じでしょうか…。
子ども視点で見ると、この「サッチー」のような存在は、まるで「親」のようにも思えます。自分のやんちゃには手厳しいバツを与えもしますが、迫る脅威からは身を包んで自分を守ってくれたり、自力では無理な飛行を実現して空からの世界を見せてくれたり、しかし最後には脅威を遠ざけるために犠牲となることも厭わない…。犠牲となったサッチーを目で追いながら、そこに涙を見せることも無く次へ進もうとするヤサコは、ちょっと拍子抜けに見る向きもありそうですが、親たる自分の心境を重ね合わせると、「それでいい、それでいいんだ、前へ進め、ヤサコ」という風に思えてくるから不思議です。
~~~
一方、ちょっと小さなお友だちには難しそうな「謎解き」の部分でしたが…これまた、衝撃的な事実が色々と。
「4423」を名乗っていた、コイルドメインのあの少年は、「天沢信彦」ではなく、ひょっとしてイサコ自身が作り出したものだったのか?…とか。
猫目の父は電脳メガネを開発した研究者であり、その名誉回復と病気の母の治療のために猫目は全てを犠牲にしようとしている…とか。
ヌルキャリアーという本来の存在の意義と、電脳コイル現象との関係、そして猫目が狙う「コイルドメイン」の維持の理由…とか。
これらをつなぎ合わせていくことは、確かにワクワクしますし、燃えもします。ですが…今回のストーリーは、きっとそれのみを描こうとしたものではないのです。言葉ではほとんど語られないけれど、重要なモチーフとして出てきているのが、人の抱えてしまう「憎しみ」という感情ではないでしょうか。
先週の引きでいきなり登場し、予想に反して今回冒頭のみであっさり去ってしまったヤサコの旧友・マユミは、ヤサコの過去に少しだけ触れ、そこにちょっとだけ恨み言を言って、ヤサコを突き放していきました。しかしあれだけでは、ヤサコが全く悪い、という風にも思えませんし、集団の中での「どうしようもない出来事」だったような気もします。それでも、マユミはヤサコに嫌悪を抱きましたし、恐らく苦しみもしたのでしょう。ヤサコ本人が悪意を持たなくとも、実際に犠牲は出たのだし、その結果憎しみも生まれたのです。
また、ムスカもかくやという具合に悪者路線一直線の猫目宗助は、大きな悪意に晒されて徹底的に貶められた挙句に、自分自身が大いなる悪意となって世界に災厄をもたらそうとしていました。他の悪意によって、増殖してしまう悪意。自らの運命に反旗を翻すことが、更に大きな悪意となってしまう、この世界の矛盾。猫目を糾弾することは簡単ですが、自分は彼のようにならないと、断言できる人が一体どれくらいいるでしょうか?
そうして、猫目の目的と結託し、自らの存在意義を見出して「悪意」を保とうとする電脳的な存在・ミチコ。イサコの弱い部分を突きながら、彼女をそそのかし、ヤサコを憎むように仕向けるミチコは…見ようによっては、「自らの存在意義」を求めているだけのようにも思えます。果たしてミチコの存在が純然たる「悪」であるかと言えば…そこにはっきりと答えることが出来るでしょうか。
数々の憎悪、良きものを貶めていく悪意。それは、必ずしも、「明らかな悪というもの」から発生したものではないのです。それは、誰からも生じうる、どこにでもあり得るものなのでは?
そうした悪意に、どう対応すべきか。答えは一筋縄では得られませんが、その一つの可能性として、この回に登場する「悪意に立ち向かう人々」は、誰一人として対抗する「悪意」をぶつけてはいないのですよ。元々「プログラム」であるサッチーはもちろんですが、その操作をしていたタマコもハラケンも、襲い掛かる2.0やそのバックにいるものには一切の憎悪をぶつけず、ただただひたすらにヤサコの身を案じて行動していましたよね。
そして、主人公のヤサコに至っては…必ずしも100%正しいとは言い切れないマユミの言葉を真正面から受け止め、コイルドメインにあっても追っ手に対して大きく敵意をぶつけることなく、あの鳥居の階段でさえ「イサコを助けたい」の一心のみで行動しているんです。そこには「悪意」ではなく「善意」があるのみです。かつて自分の「消極的な善意」がマユミを不幸にしたことを教訓にしてか、今は「積極的な善意」で前に進もうとするヤサコが眩しいです。彼女の善意は、今度は悪意を昇華するところまで到達できるのでしょうか。
細い、細い、イサコとヤサコをつなぐ道。でも、そのリンクは、まだ完全に途切れたわけではなさそうです。第3話のサブタイを飾った「優子と勇子」という表面的な関係が、真の関係として語られることを思わせる「ヤサコとイサコ」という最終回のサブタイには震えを禁じえません。ここまで拡げられた問題が、どこまで解決されるのか、一体誰までが救いを得られるのか。大団円を期待しつつも、まっさらな気持ちで最後のときを迎えたく思います。
↑楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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ヌルとは元々はヌルキャリアと呼ばれ
電脳体を分離させ移動させるための存在であった
それがヤサコの祖父小此木先生の死後
一部暴走し、子どもの意識を引きずり込む
ミチコのような凶暴な存在が残ってしまった
2007/11/25(日) 03:36:58 | Powerd BYエコール・ド・サンファル
前回良い所で終わったヤサコとマユミの対峙から。
どうやらミチコさんを呼び出そうとした事をヤサコがばらしてしまった事により、
呪われるのを恐れたクラスメートがマユミを無視するように・・・
イサコが苛められたあの状態とおなじなのかな。
で、ヤサコが何故ば...
2007/11/25(日) 07:56:22 | よう来なさった!
電脳コイル「金沢市はざま交差点」です。
電脳コイルも残りあと2話。何だか12/8からすぐにNHKは再放送するようですが、やっぱりリアルタイム視聴でのライブ感を味わいたいところですね。
でも、まだ見ていない人も、この機会にぜひ。
ということで、電脳コ...
2007/11/25(日) 08:58:23 | 藍麦のああなんだかなぁ
第25話「金沢市はざま交差点」イサコを目覚めさせるためヤサコは金沢市に。そこで、かつての同級生のマユミと再会するが、マユミをいじめていたヤサコは、交差点の場所を教えてもらえず、仕方なく自分で解決するために、捜索を続けるが・・・。「痛みの先に答えがある!...
2007/11/25(日) 13:21:30 | 日々“是”精進!
金沢へと向かったヤサコは、そこでマユミと再会しました。ヤサコはマユミにいじめられていたのかと思ったら、真実はその逆でした。ミチコさんと深く関わったマユミを、ヤサコの方が拒...
2007/11/25(日) 13:40:04 | 日々の記録 on fc2
デンスケ可愛い。+゚(*´∀`*)。+゚
2007/11/25(日) 13:55:11 | 空色☆きゃんでぃ
「金沢市はざま交差点」 4423はイサコ自身ですか!!(;゚Д゚) ええ~!?
2007/11/25(日) 13:58:40 | Brilliant Corners
ネタバレをおさえつつ、簡単に感想を書きます。
コイルドメインでのヤサコ。ハラケンのアカウントで動作するサッチーがハラケンの声でヤサコに語りかけ、オバちゃんと共に、ヤサ...
2007/11/25(日) 15:01:29 | さとぴーの選択範囲
痛みの先に答えがある――。
金沢市に帰ったヤサコは、はざま交差点からコイルドメインへ。
胸の痛みが指し示す先にイサコがいる…。
イサコと4423、ミチコとの関係――コイルドメインができた理由は。
いよいよ
2007/11/25(日) 16:21:46 | SeRa@らくblog
『電脳コイル』
※下記の日記内容には、アニメ本編に対するネタバレの要素が多々記述されています。少しでも気になさ る方は御覧にならない様に注意をして下さい。
今週のお話は、第25話 『金沢市 はざま交差点』。
ストー
2007/11/25(日) 17:01:30 | どっかの天魔日記
最後の通路があると思われる金沢市のはざま交差点へ向かうヤサコ。
そこに現れた、かつての友人マユミだった。
マユミとの決着は和解というオチでは無かったですね。
マユミと和解して、イサコとの関係に繋げるのかなと
2007/11/25(日) 17:32:25 | 失われた何か
★★★★★★★☆☆☆(7)
いよいよ電脳コイルも来週で最終回。
クライマックスだけあって、いつも以上に作画は気合入ってました。
まさかのサッチーと2.0の空中戦は下手なロボットアニメより迫力あったよ。
ただ
2007/11/25(日) 19:29:19 | サボテンロボット
[アニメ 電脳コイル 第25話「金沢市はざま交差点」]
最終回を前にして、まだ盛り上がります。
底が見えないとはまさにこのことか。
サッチー改・タマの飛行形態は面白かったな...
2007/11/25(日) 19:33:53 | 王様の耳はロバの耳 [beta3]
4423はイサコだったというのは意表を突かれた。というかなんだか明かされた謎をきれいにまとめられない。というか僕の頭がパニックになってる。
結局どういうことなんだろ?信...
2007/11/25(日) 21:43:09 | 蒼碧白闇
うう…なんつーかもう、攻略本が欲しいつーか…。 なんか気合いを入れすぎて、前のめりに倒れちゃった、という感じが。 この状況で次週が最終話とくれば、どんなに力のあるスタッフでも纏め上げるだけで精一杯ではないかと。 その纏め上げる事に集中しすぎて、全く余裕..
2007/11/25(日) 23:16:39 | バラックあにめ日記
あまりに超展開すぎてついていけませんよ!(^-^;冒頭、金沢で再会したマユミ。満を持して登場した割には退場早!(゚Д゚;)とりあえずどういった経緯で二人がすれ違ったかは語られましたが、それは予想の範疇で。それらが語られるとあっさり退場~。まぁ尺の関係でそれは...
2007/11/26(月) 01:37:42 | ユルユル行こう
マユミちゃんあっという間に役目終了。
タマがヤサコを守って自爆。タマぁあああああああ!
4423は実はイサコだった!何だってー!
EDぶちぬきで怒涛の超展開をぶちかまして...
2007/11/26(月) 02:52:38 | Refuge
猫目宗助の目的はイマーゴを発見したにも関わらずメガマス社に利用された父親の無念を晴らすための復讐であった。
2007/11/26(月) 15:14:42 | 電脳コイル調査報告書
たまあああああああああ(;冠奸?!!
?
さて、マユミの件は意外にアッサリだったw
ミチコさんの件でクラスで浮いてしまった彼女をヤサコはかばってあげられなかった。
「わたしは自分で何とかしたわ。あな
2007/11/27(火) 01:48:22 | ■■テラニム日記2■■
「金沢市はざま交差点」 電脳コイル 第3巻 通常版折笠富美子.桑島法子.矢島晶子.朴路美.小島幸子 磯光雄 バンダイビジュアル 2007-11-23売り上げランキング : 271おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 金沢にやって来たヤサコは、かつて友人だったマユミと再開...
2007/11/27(火) 19:47:34 | 本を読みながら日記をつけるBlog
…言葉が出ない。〔電脳コイル〕25話〔金沢市はざま交差点〕。この期に及んで新事実。次回で最終回なのに。ヤサコのイジメ疑惑が本当の事だと判りました。結構ショックです、彼女のそう云う面を見るのは。イジメへの関わり方って色々有ると思うのですが、きっかけを作る人...
2007/11/27(火) 20:29:18 | くろぬこillust自由帳【KuroNukoMatryoshka】
友達に裏切られたらどんなに傷ついたか・・・・。マユミにはざま交差点の場所を聞くヤサコ。マユミはヤサコを友達と思わず教えてくれない。友達の命がかかってると言うと『それって本当の友達?』と冷たく言うマユミ。マユミ、ほんとに嫌な女だな!!心にキズを負ってしま...
2007/11/27(火) 20:55:29 | Sweetパラダイス
こちらは感想です。内容は前半・後半。(少し追記しました)いじめていたのはあなたの方だと言ったマユミ。マユミがはざま交差点を見つけたことが悪い噂となって流れたようです。ヤサコがつい話してしまったのかも知れません。マユミがヤサコに助けてもらいたかった時、ヤ...
2007/11/28(水) 17:17:38 | からまつそう